彼の職業は錬金術師。
それも国家に認められたちゃんとしたもの。
まだ二十歳にも満たないのに世界の理に触れた人間。




――等価交換――




あなたはよくそう言うけど、ほんとにそうかしら?









「エド、あなたは本当に等価交換って信じてるの?」
「信じるも何も、錬金術の基本だろうが。」


今更何言ってるんだコイツ、といった表情で読んでいた本から視線を上げる。
私はエドワードの怪訝な眼差しを無視して虚空に目を遣った。




「私は、信じてないよ。」




そう、等価交換なんて信じない。
だって誰がその対価を決めているの?
そんな不確かなモノに価値を定めることが出来るのは誰?




「等価交換なんて、絶対ない。」




喪ったものが多すぎて、手に入れたものが見えなくなる。
私はたくさん奪った。
人がおおよそ幸せと呼ぶものを。
等価交換がこの世の理なら、私にはもう何も残っていない。




「もし等価交換がこの世の理なら、私はエドの隣になんていられないもの。」




ようやく視線を戻してエドワードを見つめる。
彼は不機嫌な、納得してないような表情を浮かべていた。
そして揺れていた瞳を私のと合わせる。
その唇が静かに動いた。


「そんなの、オレも同じだ。」


そっと頬に触れてくる温かな掌。
彼の綺麗な瞳に映る自分が情けなかった。
バカみたいに緊張して固まっている。
エドワードはくすりと笑った。
そしてすぐに悲しく目を細めた。



「オレはもう、誰かの温もりとか優しさとか、そういうものに触れちゃいけない。
 禁忌を犯したオレには当然の報いだと思ってる。」



それは、違う。
エドワードは誰よりも純粋で美しい。
キレイな心。
私の心は曇っていて、ほんとの自分を少しも映してくれない。
いつのまにか泣きそうになっていて、
彼は、なんて顔してんだよ、と軽く頬を抓ってきた。



「でもさ、こうしてといることが出来てる。
 また、一生守ってやりたい奴を与えてもらったんだ。」



そこにいる貴方は紛れもなく真っ直ぐで。
とても眩しい光を放つ目をしていて。
自分の心の内まで見透かされているのではないか。
それでもその瞳に映っていたいと思うのは我侭ですか?
いつまでも貴方には気高くあって欲しいのです。











「じゃあ、私も一生エドを守るわ。」















それが私の等価交換。













ヨ ゴ レ テ イ イ ノ ハ ワ タ シ ダ ケ















(2005/11/13)


sozai:Dear starlet