The paths which I chose.
(私の選んだ 














昔々、とある東の山奥に誰も近寄らない大きな古城がありました。
どうして誰も近寄らないだって?
そんなの簡単。
とっても恐ろしい殺人鬼が住み着いているって噂だからさ。





「帰って来たかな、美しき故郷....か。」


イーストシティから列車でしばらく。
彼女の故郷はそこにあった。
相変わらずの広大な自然の中にひっそりと佇む古城。
それがの実家である。


「またここに戻ってくることになるとはね。」


自嘲気味に微笑むと、古びた巨大な扉を開ける。
悲鳴のような音が静かな森に響いた。
中はかなり古びていて、日の光もまともに入っていなかったが、
人の住んでいる気配はあった。
微かな蝋燭の灯りを頼りに奥へ進む。
そして限りなく暗く淀んだ空気に浮かび上がった一つの部屋。
は躊躇いなくそのドアに手をかける。




「ただいま、親父殿。」


その部屋の更に奥に座る人物。
彼女と同じ色の瞳をした男性。
虚ろな視線を彼女に向ける。


か....今更何しに帰ってきた。」


感情のない声。
果たしてこれが久しぶりにあった親子だろうか。
しかしそんなことを気にすることもなくは父親の元に歩みを進める。


「あんたと殺し合いするため。」


今まで何の変化もなかった男に反応が現れる。
一瞬目を大きく見開くと、今度は喉で笑い始める。
くっくっくっとただ笑うだけ。


「あれほど嫌がっていたのにか?」


びくっとの体が震える。
それは別に父親に威圧されたからでも何でもない。
自分の決意の在り処が一瞬揺らいだからだ。
しかし彼女は一瞬目を閉じて、そして再び開ける。
その時にはその迷いも何もなく、ただ一点のみを見据えていた。


「もう、決めたから。」


しばらく時が止まったかのように見詰め合った二人。





刹那





風を切る音と金属の音。
激しくぶつかり合い飛び散る血しぶき。
一瞬で戦場と化す。










その、人と人が争いあう音は近くの村にまで届いた。
村人は不思議がって首をかしげた。
今までこんな音は聞いたこともなかったから。
一人の老人が遠くの音に耳を澄ませて言葉を漏らす。


「始まったか....」
「始まった、って何がですか?」
「継承、じゃよ。」


それからその老人は何も語ろうとはしなかった。
ただあの古城のある方を見つめている。







古城からは日昼夜絶えず何かがぶつかり合う音が聞こえました。
それがまた村人の恐怖を煽り、そうしてそのおとぎ話は語り続けられます。



昔々、とある東の山奥に誰も近寄らない大きな古城がありました。
どうして誰も近寄らないだって?
そんなの簡単。
とっても恐ろしい殺人鬼が住み着いていて、
いつでも誰かを殺す音が聞こえてくるからさ。




(2005/11/02)