いつでも貴方の帰る場所で在りたい。
どんなに疲れていても、その疲れがすぐに解けるように。
寂しいときは、温もりを与えられるように。
不安なときは安らぎを。
苦しみの代わりに愛情をあげよう。
だからいつでも帰って来ていいよ。
私はずっと此処にいる。
此処で貴方の帰りを持っているから。












「ただいま」


突然開けられた扉から現れたその人は、ずっと会いたかった人。
見た瞬間固まって、すぐに嬉しい気持ちが込み上げて来た。
気付いたら駆け出していた。
また少し大人になった身体に思い切り飛びつく。


「エド!お帰りなさい!」


久しぶりの帰郷は何ヶ月ぶりだろう。
今回は機械鎧を派手に壊したのか、右腕がなかった。
スペアの腕が付いてないということは、真っ先に私のところに来てくれたのだろう。
家族同然の整備士の所にも寄らずに。
一番、最初に。
くすぐったくて、自然と笑みが零れた。
彼は無い右腕の分温かい左腕できつく抱きしめてくれた。


「それにしても腕大丈夫?また無茶したの?」
「オレはんな無鉄砲なガキじゃねーよ」
「ガキじゃなくても無鉄砲なことには変わりないでしょ!全く、心配する身になってよ!」


コツンと額を小突いて、いい加減玄関先では疲れるだろうからと部屋に招き入れた。
時刻は丁度正午過ぎ。
は昼食を作っていた最中だった。
部屋に入ると空腹を誘う良い匂いが鼻腔をくすぐった。


「ご飯食べてく?」
「ああ」
「でもその前にウィンリィの所行って腕付けて貰いなさい」
「えー」
「えーじゃない!だって左手じゃうまく食べれないでしょ?」
が食べさせてくれれば問題ないんだけど?」
「……ッ!〜〜……ッさっさと行って来い!!」


エドワードはにやにや笑いながら。
それが如何にも恥ずかしくなって半ば強引にその背を押して出した。
彼は渋々と言った様子で整備士の元に向かう。
その姿を見送って、ぱたりとドアを閉めた。
冷やりと水で冷たくなっていた手は、火照った顔の熱をずっと熱く感じさせた。






そうして帰ってきたエドワードと少し遅めの昼食をとって、其れから他愛も無い話に華を咲かせた。
彼の話す旅の話はとても魅力的で、一方で危ないことは隠して話していることが容易に見て取れた。
嘘がつけない人なのか、そういう場面になると視線をずらして話を変える。
私は敢えて何も突っ込まないでその話に耳を傾けた。

陽もとっぷり入って夕食の時間。
彼の大好物はいつでも作れるように材料を常に買っておいた。
にこにこしながら自分の作った料理を食べてくれることがひどく嬉しい。
そしていつもは一人の食卓の向かいに愛しい人がいることも。
ウィンリィの家に行かなくてもいいの?と尋ねると、機械鎧が出来たらな、と 私の嫉妬を綺麗に流して優しく笑ってくれた。

一人で寝るには大きいベッドも二人だと少し狭い。
身体をくっつけて、ぴたりと抱きしめ合うと、胸の鼓動が一際大きく鳴る。
きっとこの音も聞こえてしまっているんだろうな、なんて思うといよいよ恥ずかしくなるが、 それは彼も同じらしく、耳元の胸からは少し早めの鼓動が聞こえた。


「ねぇ、エド」
「ん?」
「私、エドの役に立ててる?」
「……………」
「っ何で黙るのよー!?私やっぱり役立たずなの?」
「……………」
「エドー、何か言ってよ……」


何にも言わないエドワードに不安を感じる。
やっぱり私じゃダメ?
そんなことが悶々と浮かんできたが、ふとした微かな振動にその不安は怒りに変わった。
くつくつと声を堪えて笑うエドワード。
こっちは本気だったのに!
ぷいっと身体を反転させて彼に背を向けてやった。


「酷いよエド!私ほんとに怖かったのに!」
「悪かった、って。ほら、こっち向けって」
「う〜」


無理矢理向かされて目の前にはエドワードの真剣な顔。
とくりと胸が跳ねた。
息がかかって、ちょっと顔を上げたら唇が触れ合ってしまうような距離。
眼を逸らしたって逃げられない。


「オレが頑張れるのはがいるからだ」
「………ッ、エ…ド……あの……」
が此処で待っててくれるから、に『お帰り』って言って欲しいから、オレはどんなことでも出来るんだ」


優しく笑う貴方に温かい水がふるふると零れそうになる。
この想いをどうすればいいのか分からなかったからとりあえず目の前の身体を抱きしめた。
そうすると必然的にくっつく唇。
その温かさは更に私の胸を熱くした。


「わたしッ…ずっと、ここに居るよ。エドのこと待ってるから……っ」
「ああ」
「だから、絶対帰って来てね?」
「当たり前だろ


強気な笑顔が大好きだ。
望む望まずに関わらず曖昧だけれど私の不安を溶かしてくれるから。
こうしてまた抱き合えるのはいつになるか分からないけど。
それでもいつかはまた温もりを感じられる。
そうだよね?
明日はいなくなってしまう此の愛しい人を出来るだけ感じておこう。
離れてしまう距離を今だけでも埋めておこう。



そうしてまた明日「いってらっしゃい」って送り出してあげるよ。
だから私に「お帰りなさい」って言わせてね。

































(2006/03/20)

お題提供:Abandon様『鋼的10のお題』