「エドって錬金術するときこうやるじゃない?」
はぱちんと手を合わせて見せた。
エドは、そうだけど、と曖昧な返事を返して再び本に視線を移す。
此処は現在宿泊中の宿屋の一室。
アルは買出しで不在だ。
私はやることもなくぶらぶらと足を投げ出してベッドに座っていた。
この暇を解消するには目の前で自分の世界に没頭するエドワードを引きずり出さねばならない。
そんなエゴイズムで出たふとした疑問。
「これって円の力でしょ?自分の中に円を作る」
その構築式はエドしか知らないけど。
むしろ私が知っていたらエドは怒るんだと思うけど。
(私がそれを知るときはエドが死んだときだけよ)
私だって錬金術師だから円の力で錬金術を発動させることは分かる。
ただ其処でちょっとばかしやりたいことが浮かんだのだ。
「ねーエド、こっち、来て」
半分命令口調で。
エドは、何なんだよ、とぼやいて立ち上がって私の隣に腰を移した。
「それで?」
「ちょっと此処に座っててね」
「?」
は立ち上がってエドワードの目の前に立った。
そしてだらりと下がっていたエドワードの両手を持つと、其々手の平を合わせた。
「何がしたいんだ?」
「うん、……やっぱダメなのかな?」
「だから“何が”?」
「円」
確かに今こうやって手の平を合わせていると二人分の円が出来ている。
しかしだから何だというのだ。
の真意が全く理解出来ずにエドワードは怪訝な顔をした。
一方では少し悲しそうに眉を顰めて見せた。
「二人じゃ、何も出来ないんだね」
そのか細い声に。
エドワードは胸が締め付けられた。
同時にエドワードは合わせられていた手を握り締める。
はハッとした顔でエドワードを見つめた。
其処には思いの外真摯な表情があった。
「そんなこと、ないだろ」
「でも…錬金術、発動しないし…」
「錬金術なんて如何でもいい」
「?」
次の瞬間引き寄せられた衝撃とエドワードの温もり。
繋がっていた手を首に回されて、エドワードのそれはの腰に回った。
隙間なくくっつく二つの体。
吐息がかかる距離で耳元に囁かれたセリフはきっともう忘れられない。
「二人でいるから幸せなんだよ」
手の平合わせ
(2006/03/20)
お題提供:Abandon様『鋼的10のお題』