「おーい、帰るぞー!」
「あっ待ってあとこれだけ読ませて!」
「ったくしょうがないのな」
珍しくエドからの閉館時間30分前のお帰りコール。
丁度キリが着いたのだろうか?
ともかく自分はほんの10分前に読み始めたこの短編集を途中で中断することが頂けなかった。
エドには悪いけどたまには待っててもらおう。
そうしてプラス20分。
「あー面白かった!ごめんねエド、帰ろう」
「おお、もう良いのか?」
「うん!あっエドも偶には小説も読もうよ、これ面白かったよ?」
「気が向いたらな」
ほら、早く片付けて来い、とエドが促すので固まっていた腰を解して本棚に急いだ。
偶には読めば良いのに。
難しい錬金術書とかばかり読むから頭が重くなって背伸びないんじゃない?
なんて、そんなこと言ったらきっと、いや絶対怒るだろうな。
「行くぞー」
「あっうん!」
出口にスタンバイしていたエドの言葉にハッとして、駆け足で近寄った。
至極当たり前のように差し出された左手をぎゅっと握り返す。
外は夕日が少し沈んで、オレンジとダークブルーのグラデーションが綺麗だった。
「遅くなっちゃったねー」
「誰の所為だ誰の」
「いつもは逆でしょ!でも何で今日はあんなに早く?良い本なかった?」
「偶には、とゆっくり帰りたかったんだよ」
「!……そっか…」
くすぐったくて嬉しくて。
顔がニヤけてしまって如何しようもない。
ああエドにからかわれてしまう!
少し俯いて、だけどエドの手をずっと強く握った。
「ま、結局いつもと大して変わらない時間だけどな」
悪戯な声がして上を向くとエドがやっぱり悪戯な顔をして笑っていた。
「それはそれはっすいませんでした!!」
悔しくてちょっと大声で言ったらエドはぶはっと噴出して笑った。
ケタケタと笑い続けるエドをどうしたらいいのか分からなくって、
は眉間に薄い皺を寄せるしかなかった。
ついでに急激に赤くなる顔を如何にかしたかった。
「そんなに笑わなくてもいいじゃない…!」
「悪い悪い、ほら、お詫び」
「お詫び?」
怪訝にエドを見ればすぐに感じる温かな温もり。
キスされたと気付いたのはそれから数秒後。
触れるだけのそれは私の思考を止めるに十分すぎた。
眼を開けると意地悪く笑うエドの顔。
「機嫌直ったか?」
「………〜〜〜〜!!!不意打ちッ…、ずるいっ!」
「じゃあ今からキスしまーす」
「へっ?……ッ!」
そうして強引に上を向かされてされた深いキス。
腰に手を回されてふわりとかかとが宙に浮いた。
いつから私は背伸びして彼のキスを受け入れるようになったのだろう。
(もう小さいなんて言えないじゃない)
伸びたね
(2006/03/20)
お題提供:Abandon様『鋼的10のお題』