ねえ、こんな風に考える私は狂っているのかな?
貴方は怒る?笑う?呆れる?
でもお願い。
此れだけは貴方にしか頼めない。
私を愛してくれているのなら、
どうぞ私を殺して下さい。
killing me
「エドエドー、」
「どうした?」
珍しいな、お前から甘えてくるなんて。
エドはくすりと笑って纏わりつく私を膝に誘った。
背中から感じるエドの体温に安心する。
心がすぐに溶けていって、ああ、このまま身体も溶かしてエドと混ざり合ってしまいたい!
紅く染まった私の頬をエドがすらりと長い指でつついた。
「で、何か用か?」
「あー…うん、あのね、エドにお願いがあるの」
すごすごと向きを変えて、エドのがっちりとした胸に顔をうずめる。
大好きなエドのにおい。
「この先、もし私がエドのことを分からなくなったり、エドが私のことを好きじゃなくなったら、私のこと、エドに殺して欲しいの」
「!?……なんでんなこと言うんだよ…」
低くて、少し怒った声が頭の上から聞こえた。
堪らずぎゅっとエドを抱き締めるとエドも力を込めた。
エドとの間に隙間なんていらないの。
「だって…エドを愛せなくなった私も、エドに愛されなくなった私も、どっちも価値がないから」
「何言ってんだよ、そんなこと…」
「エドがいなきゃ生きてけないし、生きていたって私は私じゃない」
「……」
「ね、だから、私を殺してくれる?」
こんなに醜く貴方を愛する私は狂ってるよね?
それでも私は貴方で終らせられたい。
「エドワード、愛してるの。だから…」
「嫌だ」
「エド……でも私はエド以外の人に…」
「が死ぬ時はオレも一緒だ」
きれいなひとみがひすいいろにかがやいてわたしをみつめる。
切なげに細められた瞳が私の胸をちくりと締め付けた。
絞りだしたような声が深々と降り始める。
「オマエを愛さないオレも、オマエに愛されないオレも、生きてたってしょうがない。そうだろ?」
「エド、エド、でもエドは生きなきゃダメなの。エドは神さまの子だもの。」
そのきれいな瞳も髪も、しなやかな身体も、強い力も、頭の良さも、何もかも。
エドワードという全てを構成するものは、誰にも汚せない。
魂も何もかも気高く美しい貴方。
だれもころせないわ。
「エドは愛されてるの。神さまにも、人間にも、この世のすべてに。だから、そんなエドを私なんかが奪っていいはずなッ……!」
「もう、何も言うな。」
口唇に触れていたエドの冷たい手がするりとなぞって離れると同時に、温かいエドのそれが降りてきた。
ゆっくり、ひとつひとつを確かめるような動きで、しっとりと濡れる口唇。
エドワードの眼は、少しも私から離される気配はなくて、私はぎゅっと眼を閉じた。
瞳で麻酔を刺されて、口唇から媚薬が染みてくる。
いとしい。
どうしてひとはこんなかんじょうをしっているのだろう。
しらなければこんなにくるしくならなかった。
しらなければこんなにてにいれようとはおもわなかった。
もうあなたなしではいきてゆけない。
ゆっくりと離された口唇をもう一度エドが鋼の指で触れる。
熱ったそれをひんやりさせて、エドは少し泣きそうな顔を見せた。
「オレ、絶対にお前を守るから」
「エド……」
「オレはを殺すためにいるんじゃなくて、守るために傍にいるんだ」
「エド、エド、でも、……」
「お前はオレを愛さなくならないし、オレもお前を愛さなくならない。それで等価交換だろ?」
くすりと微笑んだエドに鼻の奥がツーンと痛くなって、ふるふると温かい水が溢れそうになる。
そうやって貴方は私の不安を溶かしてゆくんだ。
「二人一緒で生きなきゃ意味ねぇんだよ」
抱き締められて頭の上から浸透するエドの声に、心がスーッと透明になる。
エドの鼓動がとくりとくりと確かに鳴っていて、私はどうしようもなく嬉しかった。
手を伸ばしてぎゅっと抱き締めかえす。
「エド、愛してるよ」
エドになら殺されてもいいって思うの。
たとえば貴方のその綺麗な機械鎧で胸を刺されたら、どんなに幸せだろう。
貴方のしなやかな腕で首を絞められたら、どんなに幸せだろう。
どうせ死ぬなら貴方に、綺麗に殺して欲しい。
(もしかしたらわたしがしぬしゅんかんのあなたのつらそうなかおでゆうえつかんにひたりたいのかもしれない)
なんて、考える私はやっぱり狂ってる?
それもこれも全部は貴方が愛しいからなの。
あなたにくるったわたしをころしたいほどあいしてください
ふたりでずっといきてゆけたらどんなにすてきなことだろう。
(2005/01/29)